今週のコラム 第三十一回

ライアンを超えた日 〜ランディ・ジョンソン
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 今年の甲子園で日南学園の寺原投手が154キロという高校生の最速記録をマークしました。これは松坂投手、新垣投手の記録した151キロを大きく塗り替える記録となりました。そのわりには結構打たれていたと思いませんか?
 たしかに指にきっちりとボールがかかれば150キロ台のボールを投げることができるのですが、きちんとひっかからないときは130キロ台前半にまで球速は落ち込んでしまうのです。特にセットポジションになると、明らかに球速は落ちていました。そういう意味では、まだまだ完成度の低い荒削りな投手ということができるでしょう。それだけに今後の成長も期待できるというわけです。
 甲子園での怪物投手としては、やはり江川卓。日本全国の強豪高校が甲子園出場のための練習ではなく、打倒江川のために練習をしていたというのも怪物伝説ならでは。
 江川投手3年夏の栃木県予選。5試合でノーヒットノーラン3回、残り2試合はそれぞれ1安打完封という離れ業で甲子園出場。5試合で相手に与えたヒットが2本ですから、どれくらいすごいピッチングだったかは容易に想像ができると思います。
もちろん栃木県の高校も江川を倒すためにピッチャーマウンドより5mも前に投手を立たせてバッティング練習などをしてきたそうですが、それでもまったく歯が立たなかったというのですから、その実力は高校生離れしていたのです。関係者の話をまとめると、160キロくらいは出ていたのではないかと……。
私のまわりにも江川投手と対戦したことがあるという人がいましたが、その人も「ミットにボールが収まってから振り始めた」
と言っていました。また関東大会に出場した人は(直接の対戦はなかったそうですが)、「ロッカールームでミーティングをしていると、たまに場内がワーっと盛り上がるんだよ。何かと思ったら打者がバットに当てるだけで大歓声なんだよな」。
とんでもない怪物投手であったことだけは確かなことでしょう。
 日本での最速記録は伊良部投手の158キロということになっています。マイル表示でいえば98マイルといったあたりになります。その伊良部投手はヤンキース時代に活躍しましたが、日本のときのような力でねじ伏せるというピッチングは見られませんでした。しかし決して球速が落ちていたわけではありませんでした。150キロ中盤のスピードではメジャーの打者にとって脅威ではなかったというだけの話なのです。
 そんなツワモノ揃いのメジャーの中でストレートで三振が取れるピッチャーといえばランディ・ジョンソン。説明の必要もないくらいみなさんご存じのピッチャーでしょう。あだ名はビッグユニット、つまりでかい物体。
 1988年のメジャー昇格はモントリオール・エキスポス。翌年からシアトル・マリナーズへと移籍するも、しばらくはただボールの速いノーコンピッチャーでした。1試合平均7〜8個のフォアボールを出していたのですから、どれくらい手のつけようのないピッチャーだったか想像できるでしょう。ほとんど草野球以下ですね。
 そんなノーコンピッチャーでもメジャー昇格3年目からは2桁の勝利を上げるようになりました。4年目からはイニング数を上回る奪三振を数えるようになりました。しかしそれでもノーコン病は治らず、安定したピッチングはできていませんでした。
 そこに大きな転機が訪れたのです。ランディ・ジョンソンが師と仰ぐノーラン・ライアンから投手としてのメンタル面での指導を受けたのです。
 翌年からのジョンソンは見違えるような投手へと変身したのです。
行き先はボールに聞いてくれ」というくらいのノーコン投手が、なんと1試合平均3個の四死球に収まるようになったのです。これに2mを超す長身から投げられる100マイルの速球があれば鬼に金棒。しかも間合いの取りにくいクイックなモーションでサイド気味から投げ込まれる。特に左打者には打ちにくいはずです。コロラドロッキーズの好打者ラリー・ウオーカー選手などは、かつて頭上をかすめる速球を投げられた経験があるとはいえ、ジョンソンが先発と聞くや、その試合に出場することを拒んだという逸話すら残っています。
 間もなく38歳になろうというのに、ボールの勢いにかげりは見えません。それどころか、コントロールに磨きがかかったジョンソンは、今まさに全盛期を迎えるようにさえ見えます。

2001.8.23K

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